私事ですが、私の父親(85歳)は、コロナ騒動の最中に自宅近くの総合病院に入院し、今は、その系列の介護施設で暮らしています。
そして驚くべきことに、この総合病院と介護施設、コロナ騒動の3年間において面会制限を一切行ってこなかったのです。
総合病院では、おそらく他に例がないと思います。病院のロビーには、「面会制限を行わない理由」と題した掲示があり、こう書かれています。
理事長の信念と医学的事実に基づき家族面会は当面継続する方針です。大事な家族との面会は、患者様の治療効果を引き出し、認知症の進行を遅らせ、入院期間を短くさせ、死亡率を低減させる効果があります。咳も熱もない方の面会による極めて僅かな感染リスク上昇よりもメリットが大きいと考えております。今後も面会制限を行わず、患者様が安心して入院できるよう努力していきます。
この病院と介護施設のおかげで、入院したその日から、父とはほぼ毎日、顔を合わせることができています。しかも父は毎日、晩酌をしながら幸せに過ごしています。私がコップに注いだビールを、夕食時に「はあー、うまかー!」と言いながら飲んでいる父の顔を見ていると、私まで幸せな気分になります。
余談ですが、介護施設での晩酌には理由があり、施設の方針もあるのですが、父は、昨春他界した母と共に、一切の延命治療を拒否する「リビング・ウィル」に数年前に署名し、これに家族も同意しているからです。母は看護師だったため、延命の実態を現場でよく知っていた上に、手塚治虫の『ブラック・ジャック』や『火の鳥』を読み、「人はいつか死ねるから生きていける。永遠に生きとかやんなら気が狂うよー」「心臓が動いてることと、生きてることは違う」このようなことを、よく家族で話し合っていました。母も延命治療を行わず緩和治療しか行わなかったため、他界するまで終始穏やかで、最期は眠りながら安らかに息を引き取りました。
コロナ騒動の3年もの間、総合病院と系列の介護施設で、一切、面会制限を行わなかったことには、患者さんの家族、スタッフと家族、自治体、医師会などから、相当な反対や風当り、圧力もあったことは想像に難くありません。そこで面会の継続を続けてこられた病院の理事長に、直接お話を伺ってきました。
理事長は、これまでの現場経験から「面会のメリット」が「コロナの感染リスク」を遥かに上回ることを、主な根拠として「面会の継続」を貫かれたとのこと。コロナとインフルエンザの比較と、また一味違っていて興味深かったです。また、掲示の「咳も熱もない方の面会による極めて僅かな感染リスク」という文言から、「無症状感染」や「PCR検査」の意味するところや、日本人にとってのコロナ感染のリスクが、どの程度なのか等、正確に把握されていたのだと思います。
さすがに当初は院内スタッフからの猛反対に遭ったようですが、コロナの患者さんが、ほとんど重症化しない実態を、スタッフが現場で知っていくうちに反対もなくなり、そのまま今に至っているそうです。
周囲の病院からは、「えっ?まだ面会してるの?」と驚かれたり、政治家からの様々な忠告もありつつ、あまり気にされなかったことなどを、淡々と笑いながら話してくれました。私の住む地元に、このように志高い方が理事長を務める総合病院があることを誇りに思うと同時に、理事長が信念を貫き通し、実践され続けたことに対し、尊敬と感謝の気持ちを込めて、心ばかりの寄付をさせて頂きました。
医療法人発心会 姫野病院 https://www.himeno-hp.jp/